彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
2.胸騒ぎ
「え――っ、ごほっ!」
私はむせた。
「あら、大変」
母がティッシュを取ってくれる。
「……ごめ……突然、どうしたの。お母さん、お付き合いしている人、いたの?」
「うん。莉々には黙っていたのだけど」
「いつから?」
「五年前」
――気付かなかった。
「どんな人? どうして黙っていたの?」
「ごめん、怒らないで」
「怒ってないよ」
そう答えながらも、自分が詰問するような口調だったことに気付いた。
「この年にもなって、って恥ずかしくって。相手は市役所の同僚。所内の俳句同好会で知り合ったの。彼もバツイチ、奥様を病気で亡くされていて――似てるの、私たち。お母さんは来年で定年だし、ちょうどいいタイミングなんじゃないかって。彼は五歳年下だけど、この年になると、誤差みたいなものでしょ」
母が幸せそうに微笑むのを見て、胸が熱くなった。私が八歳の時に父が亡くなってから、母は女手一つで私を育ててくれたのだ。
箸と茶碗を置き、姿勢を正す。
私はむせた。
「あら、大変」
母がティッシュを取ってくれる。
「……ごめ……突然、どうしたの。お母さん、お付き合いしている人、いたの?」
「うん。莉々には黙っていたのだけど」
「いつから?」
「五年前」
――気付かなかった。
「どんな人? どうして黙っていたの?」
「ごめん、怒らないで」
「怒ってないよ」
そう答えながらも、自分が詰問するような口調だったことに気付いた。
「この年にもなって、って恥ずかしくって。相手は市役所の同僚。所内の俳句同好会で知り合ったの。彼もバツイチ、奥様を病気で亡くされていて――似てるの、私たち。お母さんは来年で定年だし、ちょうどいいタイミングなんじゃないかって。彼は五歳年下だけど、この年になると、誤差みたいなものでしょ」
母が幸せそうに微笑むのを見て、胸が熱くなった。私が八歳の時に父が亡くなってから、母は女手一つで私を育ててくれたのだ。
箸と茶碗を置き、姿勢を正す。