彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
 先生の目を見て言いたかったのに。私、情けないなあ。

「いや――大したことは。役に立てて良かった。それに俺も、おにぎり、嬉しかったし――それより、野崎さんが言いたいことは、それだけ?」
「――はい」

 本当は、先生に好きだと伝えたいけれど。

 これ以上、重い女になりたくない。手作りおにぎりとか、シェアハウスのこととか、先生にはたくさん迷惑をかけてしまった。だから最後くらいきれいに締めくくりたい。

「ありがとうございました。これからもずっと、感謝しています」

 私は笑顔を作り、顔を上げた。けれど雨宮先生は、視線をそらした。気まずくさせてしまっただろうか――そうだよね、泣いてたの、ばれているだろう。

 謝ろうか、どうしようか。でも言うべきことはもう言ったし――私が逡巡していると、 雨宮先生は言った。

「――参ったな」
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