彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
13.ハッピーエンド
 パーテーションで仕切られた自席。私はお弁当の蓋を開け、小松菜・しらす・卵のチャーハンを口に入れた。

 うん、今日も美味しい。そう思った時。

「野崎さん、相変わらず地味弁ですか。退職間際まで寂しくデスクランチ、変わりませんでしたねえ。その家庭的なところ、ほんと尊敬しちゃいます~。私も怜士さんにお弁当、作ってみようかなあ」

 私のデスクを通りかかった香奈ちゃんは相変わらずかわいさ満点の笑顔だが、目が笑っていない。

 言い返したい。でも何て言ったら?

 こういう時、ぱっと言葉の浮かばない自分が悔しい。
 私は唇をかみしめた。
 その時。

「悪い、話し中に。野崎さん、これ」
「あ、はい。ありがとうございます」

 雨宮先生――いや、柊さん――がやってきて、小さな紙袋を差し出した。

 思わず立ち上がって両手で受け取ると、ぽってりとした重さ。

 これは。

「吉野の豆大福。いつものおにぎりのお礼」

 告白の翌日から、柊さんは毎日、おにぎりのお返しに、私におやつをくれるようになったのだ。コンビニのスナック菓子の時もあれば、仕事で外出したついでに立ち寄った有名店のものだったり。セレクトは様々で、私の毎日の楽しみになっている。

 けれど、わざわざ香奈ちゃんの前で渡さなくたって……。しかも理由まで明示して。
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