彼がくれたのは、優しさと恋心――司書志望の地味系派遣女子、クールな弁護士にこっそり愛されてました
「んも~、雨宮先生、素敵!」
「ほんと。良かったわねえ、莉々ちゃん」

 その日の夜。

 帰宅した私は、今日のことが嬉しくてたまらず、たまたまキッチンでおしゃべりしていた井上さんと塚本さん(この二人はすっかり仲良しだ)に話した。

 いつの間にか私と柊さんの関係に気付いていた彼らは、今となっては、よき話し相手だ。

 柊さんは、告白の日以来、ここには来ていない。

「大家の付き合ってる相手が出入りしていたら、住人にいい印象は与えないだろ」

 というのがその理由で、私は、柊さんのこういうところもとても好きだ。

 じゃあ私たちはどこで会っているのかというと、お昼に時間がある時はルーフガーデンで。週末のどちらかは街歩きをしたり、映画や美術館、食事に行ったりしている。

 柊さんも私も経験はそれなりにあるわけだけど、歩みはいたってゆっくり。けれど私はそんな関係がとても心地よく、満たされている。
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