あなたの子ですが、内緒で育てます
「は、はあ……。しかし、デルフィーナ王妃が牢屋に捕らえられております。今、ロゼッテ王女が頼れるのは、ルドヴィク様しかいらっしゃらないかと……」

 使者を気にしてか、侍従が面倒なことを言い出した。

「世話など、乳母でもなんでも雇って任せておけ。なぜ、俺が面倒をみなければならんのだ」
「では、ロゼッテ王女を王宮に預けますか?」
「好きにしろ。俺の知ったことか。それから、デルフィーナの王妃の位を剥奪する」

 侍従は呆然と立ち尽くし、俺を見る。

「陛下。本当にそれでよろしいのですか? デルフィーナ王妃は陛下にお会いしたいと、申されておりましたが……」
「王妃と呼ぶな。王の血を引く王子を殺そうとした女だぞ。罪人だ!」
「は、はい!」

 俺の剣幕に恐れをなしたのか、侍従は慌てて部屋から出ていった。
 これで、デルフィーナは正式に俺の王妃でなくなる。
 空位になった王妃の座。
 それを埋められるのは、セレーネだけだ。
 チェスの駒をキングの前まで進めた。
 
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