あなたの子ですが、内緒で育てます
「デルフィーナ。お前には特別に、あいつの力を教えてやろう。ザカリアの力は人の力を奪い、自分のものにしてしまう力だ。ロゼッテが危険ではないか?」
「そんな力を!?」

 役立たずな力だと聞いていた。
 けれど、今となっては危険な力だ。

「ロゼッテが王宮で暮らせるのは、王の子の力を持っているからだろうな。力を失えば、ザカリアたちはロゼッテを修道院にでも入れて、知らん顔するつもりだろう」

 ルドヴィク様は酔っているのか、いつも以上に多弁だった。

「お前のせいで、今のロゼッテは罪人の子だ。どうとでもできる」
「わ、わたくしのせいで、ロゼッテが……」
「そうだ。お前のせいだ」

 王子一派に毒殺未遂事件を起こした罪人。
 それが、わたくし――
 ルドヴィク様は、ルチアノを次の王と決めていて、ロゼッテのことなど、どうでもいいのだ。
 わたくしだけでも、ロゼッテを守らなくては。

「デルフィーナ。お前にしてやれるのは、これくらいだ」

 わたくしの前に、短剣が一本と睡眠薬が入った瓶が一本。
 王宮へ戻り、ザカリア様を殺害しろと、ルドヴィク様は言っているのと同じ。
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