あなたの子ですが、内緒で育てます
「わたくしに殺す理由がなくなっても、あなたはこの先、ずっと命を狙われるわ……」
「そうだな」

 ザカリア様は、なぜか私のほうを見る。

「どうかされましたか?」
「いや、別に」

 隠し事だろうか。
 私にデルフィーナの心を読む力はないため、なにを考えていたかわからない。
 
「それに、セレーネはわたくしを憎んでいるでしょう? そんな相手に我が子を預けられるわけないじゃないのっ!」

 デルフィーナは渡さないとばかりに、ロゼッテを抱き締める。

「そうね。デルフィーナの言うとおりよ」
「ほら、ごらんなさいっ!」
「私はあなたに殺されかけたのだから、好きにはなれないわ。それに、七年間、民を虐げ続けたことも赦してない」

 デルフィーナは黙った。
 私を殺そうとしたのは、すでに二度目である。
 そして、荒れ果てた王都――領地の現状を知らなかったとは言わせない。
 民も処罰なしでは、納得しないだろう。

「デルフィーナだけでなく、ルドヴィク様にも罰を受けていただきます」
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