あなたの子ですが、内緒で育てます
 なくなるのが、離宮だけで済めばいいが、ルチアノの奴は王位を狙ってきている。

「ぼくが王さまになるの反対なの?」

 純真な目で、ルチアノは俺に問いかけた。

「俺はまだ王でなければ、ならんのだ」

 王でなくなった俺になんの価値があるというのだろうか。
 
「ルチアノ様、ロゼッテ様。帰りましょうか。昼食の時間までに帰ることになるとは、思いませんでしたが」

 ジュストはチクチクと俺に嫌みを言った。

「ああ、それと。セレーネ様は王妃の地位を失っても王妃でした」
「あいつは王妃などではない!」
「陛下の妻という意味ではありません。戻られてからも、民はセレーネ様を敬っている。民にとって、セレーネ様は王妃でなくなっても、この国の王妃であり続けた」

 セレーネは妃候補時代からそうだった。
 なにをやらせても、完璧にこなし、嫌がらせを受けても、難なくかわし――デルフィーナが王妃になれば、あの顔が歪むだろうと期待していた。

「自分が王だという自信がおありなら、王の地位にこだわる必要はないのではありませんか?」

 ジュストは子供たちに帰る準備をさせながら、俺にそう言った。
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