あなたの子ですが、内緒で育てます
 わたくしにも、それを要求したけれど、もちろん断った。
 王妃になったのに、自由にできないなんて馬鹿げている。

「ルドヴィク様、お願いがございますの」
「どうした。デルフィーナ」

 ルドヴィク様は王宮に楽隊を招き、音楽を奏でさせていた。
 毎日、国王陛下が優雅に暮らしているのに、妻の王妃が働くなんておかしい。
 だから、セレーネは失敗したの。
 わたくしは、間違ったりしない。
 ルドヴィク様に寄りそう。
 機嫌のいいルドヴィク様を見て、本題を切り出した。

「ルドヴィク様。セレーネを探すために、ザカリア様の領地に向けて追っ手を放っていただきたいの」
「ザカリアの領地へ……?」

 はっきり嫌だと言われなかったけれど、あからさまに嫌そうな顔をされた。
 ザカリア様の領地は、王領よりも人が集まり賑やかで、作物も豊かに育ち、繁栄している。

『どちらが国の首都であるか、わからない』

――なとと、言われるほど差がある。
 
「兵は動かせんが、使者くらいなら送れる」
「……使者で構わないわ。セレーネを引き渡すように命じてほしいの」
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