あなたの子ですが、内緒で育てます
『どうして見つからないの!』

 デルフィーナが怒り狂っている。
 ルドヴィク様は関心がないようで、眠そうに 欠伸(あくび)をしている。

『セレーネのことは、もう気にするな』

 妻の私がいなくなったというのに、ルドヴィク様は心配するどころか、夜中に騒がれて迷惑だという顔をしていた。

『朝になってから、また探せ。ザカリアの領地へ使者を送ったのだろう?』
『見つけるまで、安心できませんわ。セレーネはわたくしに、殺意を抱いてますもの』
『殺意だけでは、殺せないだろう。デルフィーナ、落ち着いたらどうだ』
『落ち着いていられませんわ。ザカリア様と一緒に逃げたに決まってますもの』

 ――私の行方をデルフィーナは当てた。

 誰でもわかることだ。
 滅多に領地から出ないザカリア様。
 そのザカリア様が、領地を出て王宮へやってきた。
 そして、その後すぐに私が消えた。
 私を連れて出たと考えるのが普通だ。
 ザカリア様が、なかなか立ち上がらない私の顔を覗き込んだ。

「気分が悪いのか? 立てるか?」
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