あなたの子ですが、内緒で育てます
「髪はまた伸びますわ。急ぎましょう。宿屋の夫婦が、兵士に情報を与えたようです」
「わかっている。だが、少し待て。店主、これをもらう」

 ザカリア様が、追加で手に入れたのはスカーフだった。
 短くなった髪を覆い、銀髪を隠す。

「ザカリア様。ありがとうございます」
「礼はいい。急ぐぞ」

 少し見ないうちに、王都の町が荒れ、人が減ってしまったような気がした。

「税金と王都へ入る道の通行料を上げたせいで、王都は人の行き来が減っている。そのせいで、物が動かなくなり、商売がうまくいってない」

 王都の門を守る兵士は、賄賂を受け取ると、ろくに調べもせずに、私とザカリア様を通してくれた。
 
「兵士まで……」
「王都の兵士は賄賂でもいいから、金が欲しい。商売人が寄り付かなくなって、物が値上がりしている」
「ルドヴィク様はなにをしているのでしょうか」
「兄上は幼い頃から、王になることが決まっていたからか、政治にも民の暮らしにも興味がない。だから、しっかりした王妃が必要だった」

 それで、妃候補を何人も選び、競わせていたのだとわかった。
 
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