あなたの子ですが、内緒で育てます
「私は不安です。今、王都がどうなっているのか……」

 王の領地から、人が逃げてきて、住みやすいザカリア様の領地で、暮らす人が増えている。
 その人数は年々増え続けていた。
 耳にする噂もひどい。

『国王陛下は遊んでばかり』
『王妃の贅沢ため、民から金を巻き上げる』
『王女のご機嫌を損ねると、牢屋に入れられる』

 ルドヴィク様もデルフィーナも、なにをしているのだろう。

「よくなることはない」

 ザカリア様はため息をついた。
 王都に人を送り込んで、ザカリア様は向こうの様子を探っている。
 ただし、心を読めるロゼッテ王女がいるため、王宮には危険で近づくことはできない。
 そのため、町の中までらしいけれど、治安も悪く、食料も乏しく、生活は厳しいと聞いた。

「だが、こちらから支援できるのは、教会を通してまでだ」
「ええ……」

 ルドヴィク様は、ザカリア様を嫌い、なにを言っても耳を貸そうとしない。
 デルフィーナの言葉なら、聞くのだろうけど……
 どうにもならない現状に、ため息をついた。

「ルチアノと出かけてくる」
「はい。お気をつけて」

 ザカリア様は引きこもりではなかった。
 目立たない格好をし、お忍びで領地や他の地域にまで足を運ぶ。
 城にはザカリア様の替え玉を置き、いつも城にいるように見せていた。

 ――すべて、ルドヴィク様の目を欺くため。 

 次代の王の可能性がある王族は、現状で三人。
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