あなたの子ですが、内緒で育てます
「七年前、私はザカリア様から助けていただきました。生き延びることができたのは、ザカリア様のおかげです。そして、この子は、王宮から追われた私が身籠っていた子、ルチアノです」

 兵士たちはルチアノが、私とルドヴィク様の子であることを察したようだ。

「子供は間違いなく、王の子だ。遠くを見る力を持っている」

 大臣の家に仕える使者が、兵士たちに告げる。

「ザカリア様は、ルチアノの後見人です。謀反を起こす必要がどこにありますか?」

 宮廷での権力は約束されたようなもの。
 謀反の可能性は完全に消える。
 それだけではない。
 ザカリア様の後見により、財力、武力ともにデルフィーナの男爵一族など、比ではなくなる。
 宮廷の権力図がひっくり返る事態になるだろう。

「国王陛下とデルフィーナ王妃に伝えていただけますか? 私が……元王妃であるセレーネが王宮へ戻ると」

 ザカリア様を捕らえるよう命じられた兵士たちの動揺が伝わってくる。
 デルフィーナが、ザカリア様に謀反の罪を着せようとしていたのは、間違いないようだ。

「先に馬を走らせ、国王陛下とデルフィーナ王妃に、セレーネ様がお戻りになると伝えよ!」
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