あなたの子ですが、内緒で育てます
「なぜ、王妃でなくなったお前が、ここにいる!」

 これが、再会の挨拶だった。
 怯えた目、焦燥感ににじむ声、苛立ち。
 ルドヴィク様から、私を気遣う気持ちは一切感じられない。

「国王陛下にお会いするため、王宮へ戻って参りました」

 ロゼッテ王女の食べ散らかしたケーキが目に入る。
 私の視線に気づいたデルフィーナが、それを慌てて隠し、ようやく私が生きて戻ったことを認識したようだった。

「セレーネ……」

 私が生きていることが、信じられないという顔をしていた。
 
「デルフィーナ。驚いているけれど、私が王宮に戻らないと思っていたのかしら?」 
 
 ザカリア様だけを警戒していたデルフィーナにとって、私の存在は想定外。
 七年の時を経て、再び顔を合わせるとは、思いもよらなかっただろう。

「わたくしは王妃なのよ。なれなれしく口をきかないでちょうだい。今さら戻ってきて、いったいなんのつもりかしら」

 強気なデルフィーナの態度は変わっていない。

「デルフィーナ。私がなぜ戻ってきたか、あなたにはわかるのではなくて?」

 ――復讐。

 デルフィーナの口の動きから読み取れた言葉。
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