あなたの子ですが、内緒で育てます
「売ります」

 容赦のない一言である。
 そんなことできるわけがない。
 だいたい、今、売ろうとしている物も、デルフィーナが許すはずがないのだ。

「なにをなさってるのっ!」
「見てのとおり、売却しています」

 セレーネが、デルフィーナを冷ややかな目で見る。
 
「荒れた王都を再建するためです。デルフィーナ。自分の贅沢のために買った品々を持ってきてください」
「なぜ、そんなことをしなくてはならないのっ!」
「あなたが、この国の王妃だからです」

 デルフィーナが『うっ……!』と、呻き声をあげて怯んだ。
 美しい顔立ちだからか、凄んだ時のセレーネは威圧感があった。

「売るのが嫌なら、王妃の位から退いてください」
「なっ……! なんの地位もない女に言われたくないわっ!」
「そうだ。王の子の産んでも、お前は地位のない女だ!」

 そう言った瞬間、廊下から大広間へ、ルチアノが入ってきた。

「お母様。売れそうな物を集めてきたよ」

 廊下にあった壺には、俺が購入した金のカップ、デルフィーナが気に入っている宝石箱が入っているのが見えた。

「なっ、なにをしているっ!」
「国王陛下なら、ちゃんとお仕事しないと駄目だよ?」
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