私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
その毬衣さんは今、私のほうをにらんでいる。
親戚の前では婚約者同士。
仲良く見えるのは表面上だけ。
私の心も笙司さんの心も、別にあるのに羨ましいなんて、なんだかおかしな話だった。
「小百里も気を付けなさい」
赤ワインが入ったワイングラスを手にした笙司さんがふっと笑った。
その目は恐ろしいほど冷たかった。
「月に一度、会う約束だろう? 先月、君から会うのを断って来たのはルール違反だ」
「ルールってそんなルールは……」
ないでしょうと言い返そうとした瞬間、笙司さんの手からワイングラスが離れ、床に音をたてて砕け散った。
赤い血のように赤ワインが飛び散った。
それに気づいた渋木のお手伝いさん達が飛んできた。
「小百里お嬢様! お怪我はありませんか」
「え、ええ……」
「すまないね。手が滑ったよ」
手が滑ったようには見えなかった。
わざと落としたのだ。
嘘をついた笙司さんの顔を見上げると、冷たい目で私を見下ろしていた。
「決めたことには従ってもらわないと。俺は蔑ろにされることと、恥をかかされるのが嫌いだ」
こうなるぞ、ということなのだろうか。
笙司さんは給仕が運んできた新しいワインとオレンジジュースを手にすると、私に差し出した。
「飲むだろう?」
親戚の前では婚約者同士。
仲良く見えるのは表面上だけ。
私の心も笙司さんの心も、別にあるのに羨ましいなんて、なんだかおかしな話だった。
「小百里も気を付けなさい」
赤ワインが入ったワイングラスを手にした笙司さんがふっと笑った。
その目は恐ろしいほど冷たかった。
「月に一度、会う約束だろう? 先月、君から会うのを断って来たのはルール違反だ」
「ルールってそんなルールは……」
ないでしょうと言い返そうとした瞬間、笙司さんの手からワイングラスが離れ、床に音をたてて砕け散った。
赤い血のように赤ワインが飛び散った。
それに気づいた渋木のお手伝いさん達が飛んできた。
「小百里お嬢様! お怪我はありませんか」
「え、ええ……」
「すまないね。手が滑ったよ」
手が滑ったようには見えなかった。
わざと落としたのだ。
嘘をついた笙司さんの顔を見上げると、冷たい目で私を見下ろしていた。
「決めたことには従ってもらわないと。俺は蔑ろにされることと、恥をかかされるのが嫌いだ」
こうなるぞ、ということなのだろうか。
笙司さんは給仕が運んできた新しいワインとオレンジジュースを手にすると、私に差し出した。
「飲むだろう?」