私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「遊びにしては本格的でした。小百里さんのピアノの音はいつも聴く人の心を惹き付けるから。まるで知久さんの音みたいで」

その名前はいつだって私の中で特別な響きを持っていた。
私にとって一番うれしい褒め言葉かもしれない。
千愛ちゃんの言葉に微笑み、店の入り口を指差した。

「ありがとう。千愛ちゃん、唯冬が来たわよ」

店に入ってきた唯冬はスーツ姿で、千愛ちゃんは白いワンピースを着ている。

「唯冬、千愛ちゃん。結婚おめでとう」

テーブルや店内は白い花とテーブルクロス、キャンドルを置いて小さな結婚式を演出した。
私は千愛ちゃんの髪に白いバラと百合の生花で作った髪飾りをつけた。

「ブーケみたい……。小百里さん、ありがとうございます」

「千愛ちゃん、泣くのはまだ早いわよ。もっとすごいのを穂風(ほのか)が腕によりをかけて作っていたから、お楽しみにね」

「はい」

「姉さん、ありがとう」

「いいのよ。これは結婚パーティーとコンクールで受賞したお祝いの二つのお祝いをかねてるんだから盛大にしなくちゃ!」

唯冬と千愛さんは結婚式は挙げておらず、籍だけを入れた。
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