私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
結婚が決まれば、私は知久と完全に別れなければならなかった。
それは私の結婚だけでなく、知久が結婚しても同じ。
私の耳に入っていた噂があった。
陣川の家は妹の結朱さんが婚約を解消されたことで、渋木に対して不信感を抱いていると。
だから、渋木側は知久と毬衣さんの結婚を急いでいるという話だった。
知久を見ると、逢生君と二人で愛の喜びを弾いている。
情感たっぷりに。

「知久君はああいう愛の曲が似合う男だよね」

「違うわ」

「え?」

「知久は悪魔のような曲が一番似合うの」

私はうまく笑えてなくて、知久への想いを隠せなくなっていた。
悪魔と契約できたなら、私はあなたを手に入れられるのかしら。

―――年が明ければ、私が結婚しないと父と約束をした一年が終わる。
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