私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
28 従姉妹の結婚
正月の集まりが終わり、唯冬は両親にだけ千愛ちゃんを紹介し、親戚の前にはまだ出さなかった。
唯冬の悪口を言う人はもちろんいて、清加《きよか》さんの教育についても甘やかしたせいだとか、父がピアノを続けさせたせいだとか、好き放題言われていた。
そんな中、陣川家が初めて渋木家の正月の集まりに顔を出さず、陣川家系列の仕事関係者も同様に来なかった。
こんな年は今までなかった。
慌てたのは渋木側で『高窪との結婚になるが、早く毬衣さんと知久君を結婚させたほうがいいのでは?』と大騒ぎとなっていた。
「小百里?」
「あ、穂風。ごめんなさい。少しぼんやりしていたわ」
「いいけど、具合が悪いながら、後は望未ちゃんに頼んで、休んだほうがいいよ」
「大丈夫」
ディナーメニューのお品書きを全テーブル分、書いていた途中だった。
春になり、四月から女の子を一人入れた。
唯冬達や千愛ちゃんが演奏に来てくれるおかげで、お客様が増え、時々、ミニコンサートも開催している。
それが好評となり、客足は増える一方だった。
ビルの経営は順調で、なにも問題はない。
私のほうに問題はないけれど、風の噂で笙司さんの店はお客様が少ないと聞いた。
そのせいなのか、ずっと向こうは私と会おうとせず、理由をつけて月一回の義務もなくなった。
会えば、父から婚約解消を申し渡されるのではと、危惧しているのかもしれない。
「カフェ『音の葉』はうまくいっているんだし、休める時に休まなきゃ駄目。今日は休んだら?」
「穂風は過保護ね」
「心配してるんだよ。年明けから、ぼぅっとしてることが多いから。考え事?」
「少しだけ―――」