私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
渋木の家に来て辛かったことはたくさんあったけど、ピアノを弾くことができたから、私はやってこれた。
今もきっと乗り越えられる。
そう思って、ピアノの前に座って鍵盤に触れた。
弾くのはベートーヴェンのテンペスト第三楽章。
激しく吹き荒れる嵐のごとく。
私は感情のままに弾き続けた。
狂ったように。
この嵐はやまない。
私の中にある感情が痛いほどに音に乗り、道にまで響き渡る。
明るい晴れ間を覆い尽くす暗雲。
光は消えて雨と強い風が吹き付ければいい。
永遠に。
嵐が私を隠してくれるようにと願いながら鍵盤を叩いた。
ぽつぽつと水滴が手の甲に落ちる。
それは雨でなく、私の涙だった。
覚悟していても、知久を失うのがこんなに辛いなんて思わなかった。
わかっていたけど、わかっていなかった。
自分にとって、知久がピアノ以上に私を支えていてくれたことを初めて知ったのだった。
今もきっと乗り越えられる。
そう思って、ピアノの前に座って鍵盤に触れた。
弾くのはベートーヴェンのテンペスト第三楽章。
激しく吹き荒れる嵐のごとく。
私は感情のままに弾き続けた。
狂ったように。
この嵐はやまない。
私の中にある感情が痛いほどに音に乗り、道にまで響き渡る。
明るい晴れ間を覆い尽くす暗雲。
光は消えて雨と強い風が吹き付ければいい。
永遠に。
嵐が私を隠してくれるようにと願いながら鍵盤を叩いた。
ぽつぽつと水滴が手の甲に落ちる。
それは雨でなく、私の涙だった。
覚悟していても、知久を失うのがこんなに辛いなんて思わなかった。
わかっていたけど、わかっていなかった。
自分にとって、知久がピアノ以上に私を支えていてくれたことを初めて知ったのだった。