私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「姉さん。笙司(そうじ)さんと女の人が来てる」

「えっ!?」

「俺も同席しようか?」

柊冴はまだ大学生だけどしっかりしていて、よく気がつく。
きっと私の婚約者が女の人と来たから、いろいろと想像してしまっているようだった。

「いいのよ。大丈夫」

婚約を解消するならするで、私は構わない。
私も同じ話をしにきたのだから。
居間のドアを開けると、そこには私が予想していたとおり笙司さんと女性が座っていた。

「小百里。座りなさい」

「はい」

父に促されて清加さんの隣に座った。
私が笙司さんの隣に座ることはなく、婚約の解消で間違いないようだけど、驚いたのは笙司さんの姿だった。
頬は痩せこけ、目は窪み、目の下に濃い隈ができている。
いつもイタリア製の高価なスーツを着ていたのにネクタイすら今日はしていない。
そして、お酒の臭いが残っている。

「笙司君の会社が潰れたそうだ。当たり前だが、渋木の娘を無一文の相手に嫁がせるわけにはいかない」

「……もちろんです」

「それに君にはずっと付き合っていた女性がいたそうだね」

父はどこで手に入れたのか、昔の写真まで持っている。
それは私が毬衣(まりえ)さんから見せられたものと同じだった。

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