私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「本来なら慰謝料を請求するところだが、今の君には支払い能力はなさそうだ」
「……恐縮です」
「笙司さんは悪くないんです! 私がちゃんと経営できなかったから!」
女性が泣き出し、清加さんは困った顔をして父を見た。
清加さんはこういう雰囲気は苦手らしく、父がなにを言うのか待っていた。
「経営責任は社長である笙司君にある。姉の紹介で君を婚約者としたが、見込み違いだったようだ。姉の顔を立てて慰謝料は請求しないが、二度とこちらに顔を出せると思うな」
父の怒りに笙司さんは身を小さくした。
まるで別人だった。
いったいこの数ヵ月の間になにがあったというのだろう。
ふらふらと笙司さんは立ち上がり、それを隣の女性が泣きながら支えた。
悪魔に生気を奪われたかのような姿で、以前のような自信に満ちた雰囲気はどこにも残っていなかった。
「申し訳ありません。失礼します……」
そういうのもやっとの笙司さんは深々と頭を下げた。
そして、私がいることにやっと気づいたのか、ぼそぼそとした声で言った。
「あいつは悪魔だぞ。店に招待した日からまるで呪われたかのようになにもかもうまくいかなくなった……」
あいつとは知久のことだろうか。
「……恐縮です」
「笙司さんは悪くないんです! 私がちゃんと経営できなかったから!」
女性が泣き出し、清加さんは困った顔をして父を見た。
清加さんはこういう雰囲気は苦手らしく、父がなにを言うのか待っていた。
「経営責任は社長である笙司君にある。姉の紹介で君を婚約者としたが、見込み違いだったようだ。姉の顔を立てて慰謝料は請求しないが、二度とこちらに顔を出せると思うな」
父の怒りに笙司さんは身を小さくした。
まるで別人だった。
いったいこの数ヵ月の間になにがあったというのだろう。
ふらふらと笙司さんは立ち上がり、それを隣の女性が泣きながら支えた。
悪魔に生気を奪われたかのような姿で、以前のような自信に満ちた雰囲気はどこにも残っていなかった。
「申し訳ありません。失礼します……」
そういうのもやっとの笙司さんは深々と頭を下げた。
そして、私がいることにやっと気づいたのか、ぼそぼそとした声で言った。
「あいつは悪魔だぞ。店に招待した日からまるで呪われたかのようになにもかもうまくいかなくなった……」
あいつとは知久のことだろうか。