私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
けれど、その先にあるものは俺にとって失っていいものじゃない。
五年という時間よりもずっと重いものだ。
「なるほどね」
兄の部屋の棚には唯冬と俺、逢生のデビューCDが置かれている。
少なくとも、今の俺は兄が利用したいと思える人間になっているはずだ。
そのために音楽事務所に自分を売り込み、二人を巻き込んだ。
一人より三人のほうが売れると俺は読んだからだ。
唯冬も逢生も性格はともかく、顔だけは抜群によかった。
それにピアノとチェロの腕も悪くない。
その読み通り、俺達は学生ながら、そこそこ有名になることができた。
「いいだろう。知久。お前は留学しろ。今のままでは、ただのアイドルだ。俺の役に立つにはまだ弱い」
白紙の進路希望にドイツの名門音楽大学の名を俺ではなく、兄が書いた。
そこに行けというわけだ。
「留学……」
その可能性を考えなかったわけじゃなかった。
けれど、俺がいない間、小百里はどうなるのだろう。
「四年たっても、まだお互いが好きでいられたなら、協力してやろう。その頃には俺も陣川製薬の重役の椅子に座っているだろうからな」
俺が悪魔なら兄は魔王だ。
四年もあれば、俺も小百里も気持ちが冷めると兄は考えている。
「卒業して帰った来たら、俺が兄さんを利用させてもらうよ」
俺はそう言ってドイツに旅立った。
小百里を置いて。
離れている間に心が離れてしまったら、話は終わり?
まさか。
俺はそんな素直で諦めがいい人間じゃないよ。
逃げるなら、捕まえるだけ。
簡単に諦められるのなら、恋に身を溺れさせるなんて馬鹿なことはしない。
―――五年後、俺は恋と復讐のすべてを叶えるのだから。
五年という時間よりもずっと重いものだ。
「なるほどね」
兄の部屋の棚には唯冬と俺、逢生のデビューCDが置かれている。
少なくとも、今の俺は兄が利用したいと思える人間になっているはずだ。
そのために音楽事務所に自分を売り込み、二人を巻き込んだ。
一人より三人のほうが売れると俺は読んだからだ。
唯冬も逢生も性格はともかく、顔だけは抜群によかった。
それにピアノとチェロの腕も悪くない。
その読み通り、俺達は学生ながら、そこそこ有名になることができた。
「いいだろう。知久。お前は留学しろ。今のままでは、ただのアイドルだ。俺の役に立つにはまだ弱い」
白紙の進路希望にドイツの名門音楽大学の名を俺ではなく、兄が書いた。
そこに行けというわけだ。
「留学……」
その可能性を考えなかったわけじゃなかった。
けれど、俺がいない間、小百里はどうなるのだろう。
「四年たっても、まだお互いが好きでいられたなら、協力してやろう。その頃には俺も陣川製薬の重役の椅子に座っているだろうからな」
俺が悪魔なら兄は魔王だ。
四年もあれば、俺も小百里も気持ちが冷めると兄は考えている。
「卒業して帰った来たら、俺が兄さんを利用させてもらうよ」
俺はそう言ってドイツに旅立った。
小百里を置いて。
離れている間に心が離れてしまったら、話は終わり?
まさか。
俺はそんな素直で諦めがいい人間じゃないよ。
逃げるなら、捕まえるだけ。
簡単に諦められるのなら、恋に身を溺れさせるなんて馬鹿なことはしない。
―――五年後、俺は恋と復讐のすべてを叶えるのだから。