私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
けれど、渋木グループが陣川にとって大事なビジネスパートナーであることも事実だ。
切るに切れない仲で気まずい空気になっているとはいえ、取引はある。

「関係をどこかのタイミングで修復したいと両家とも考えているから、俺と小百里が結婚することを選ぶだろうね。自然に」

「なにが自然にだ! ここまで画策しておいて自然にはないだろう!」
 
俺が五年前、なにを考えていたか今になってわかった兄は額に手をあてて唸った。

「唯冬と結朱の婚約が解消されなければ、お前に小百里さんとの婚約話はあり得ない話だった。だが、今は違う。二人の婚約がなくなったのはお前の―――いや、お前達の仕業か?」

兄はようやく気づいたようだった。
俺だけじゃなく、この話には唯冬も絡んでいることに。

「そうだよ。唯冬は最初から結朱との婚約を断っていたはずだ。それを無理に進めたのは両親で、俺が反対していても話すら聞かなかった。もちろん結朱にもはっきり言った。唯冬にはずっと想っている相手がいるってね」

それでもいいと言って婚約したのは結朱で、唯冬に形だけでもいいからと、その場しのぎの嘘をついたのは渋木と陣川の両親だ。
その場にいた兄も覚えているはずだ。

「親の決定に逆らえない俺と唯冬は手を組んだってわけだよ」

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