私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
言わば、共同戦線。
運命共同体。
唯冬は千愛ちゃんを、俺は小百里を手に入れるため、お互いを利用し合うことにした。

「俺達は無力な子供だったから、仕方ないよね。小百里と四年も離れるのは本当に辛かったよ」

俺が涙をぬぐうフリをすると、兄は頬をひきつらせていた。

「なにが無力な子供だ。だったら、おとなしく親のいうことを聞いておけよ」

「冗談。兄さんだって俺が高窪と結婚されたら困るはずだよ? 渋木の家と不仲なままでいいとは思ってないだろ? 俺がばっちり小百里を愛して結婚して渋木と陣川の家の絆を固めるから、心置きなく婚約を進めてくれていいよ」

兄はげんなりした顔で俺を見た。

「お前がビジネスの世界にこなくて残念だ。その腹黒さを生かせば音楽以上の才能があっただろう」

「あー、無理無理。俺にバイオリンがなかったら、小百里が俺を愛してくれたかどうかわからない」

「そうだな。女好きの金持ち道楽息子の印象で、初対面で終わっていただろうな」

「え? 俺はそんなにひどい印象!?」

「気づけよ」

兄はスマホを手にして自分の秘書に指示を出す。

「わかった。高窪社長を解任させてやる。それだけでいいのか」

「今のところはそれでいいよ」

「俺をどれだけ利用するつもりだ」

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