私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「兄さんは悪魔と五年間契約を結んだんだから、それなりの代償を支払ってもらわないと。契約書はちゃんと俺が保管してあるから破ったらどうなるかわかってるだろ?」

保管場所は秘密だけど、兄とはきちんと契約書を交わしている。

「天才バイオリニストの五年間を兄さんは買ったんだから安くはないよ? 何回タダで演奏してあげたかなー」

「お前の性格の悪さがここにきて最大値に振り切れたぞ」

「それはどうも」

「お前達は本当に……」

「五年分。兄さんにはしっかり活躍してもらう」

本当に兄は俺の役に立ってくれた。
俺は満足げに微笑んだ。
兄との契約は五年間。
四年間でなかったのはわざとだ。
兄は俺を最大限に利用するため、契約期間内に俺を結婚させることはないだろうと考えた。
俺という駒を好きに使える期間、手元に置くはずだ。
スキャンダルはもちろん兄というバックアップがあれば消してくれるし、俺をもっと使える駒にしようとバンバン仕事をいれて有名にしてくれた。
おかげで俺達は卒業と同時に日本を拠点に仕事ができるようになったというわけだ。
陣川製薬様々だよ。
魔笛のフィナーレが流れていた。
三人の少年が歌っている。

『やがて朝を告げるために輝きわたるのは』

―――ようやく夜が明ける。
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