私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
くすりと笑って知久は腕をつかんで自分のほうへ抱き寄せた。
無機質な金属の感触に知久が目を細めた。

「喜びの涙に変わるって本当だったね」

胸元のティアドロップのネックレスのシルバーチェーンを指に絡める。
そして、鎖骨にキスをし、赤い印をつけた。
昨日、散々つけたのにまだ足りないのだろうか。
流れるような動きで知久は私の唇にキスをして、ベッドに押し倒した。

「ちょっ、ちょっと知久!」

「二泊どころか一週間でも二週間でもこうしていたいな。小百里をずっと堪能していたい」

「に、二週間!?」

知久の目を見ると、今の言葉を本気で言っているってことはすぐにわかった。
確かにずっと一緒にいたいと思ったわよ!?
でも、それは常識の範囲内でのこと。
だいたい知久にも仕事があるし、私にはお店がある。
頭の中が冷静になってきて、知久の唇を手で受け止めて言った。

「あのね、私にはお店があるの! それにうまく誤魔化せたと思っているようだけど、説明がまだ……」

私が知久にお説教を始めたその時、スマホが鳴った。
ずっと鳴っているスマホに気づき、知久もさすがに手を止めて起き上がった。

「油断した。電源切っておけばよかった」

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