私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
36 私達を繋ぐもの
開店前の店に朝早くからやってくるなんて、よっぽど腹が立ったに違いない。
章江さんは相変わらず暗い色を好んでいるのか、グレーのスーツを着ていた。
その真逆なのが毬衣さんで、胸元が大きく開いた赤のワンピース姿だった。
二人に共通しているのは目の下に隈を作っているということだった。
私が知久と現れると、二人はわずかにひるんだ。
「穂風。ごめんなさいね。迷惑をかけて」
「平気。望未ちゃんが嫌な思いをすると困るから、出勤はランチタイム直前でいいよって連絡をしておいたよ」
「ありがとう、助かるわ」
純粋な望未ちゃんがこの二人を見たらどう思うか。
章江さんは憎悪のこもった目で私を見ていた。
きっと娘の恋の相手を奪った悪い女。
そんなふうに思われているのだろう。
「知久さんは呼んでませんよ」
冷ややかな章江さんの目に怯むことなく、知久は微笑んだ。
「小百里と俺が婚約したと陣川から聞いてませんか。ついさっきまで一緒にいたので、店まで送ったんですよ」
私は頬をひきつらせ、穂風はカウンター横の柱に頭をゴンッとぶつけていた。
「い、一緒に!?」
毬衣さんが青ざめた顔で私を見てにらみつけた。
「将来について語りあう必要があったので。ね、小百里?」
さりげなく、すでに呼び捨てにしているけど、毬衣さんは気づいている。
もちろん、穂風も。
穂風は頬を引きつらせていた。
「そうです。知久さんの仕事のスケジュールもありますから、お互いの仕事を尊重してこの先を決めるつもりです」
一緒にいたことをわざわざアピールする必要はないでしょ!?と、知久をにらみつけた。
余計なこと言わないで欲しい。
知久に目で合図を送ったけれど、向こうは『もっとアピールしようよ』と目を輝かせて私を見てくる。
するわけないでしょっ!?
「……私は結婚後もカフェは続けるつもりなので話をしておきたくて」
知久がなにか余計なことを言う前に、先回りをして、それらしいことを言った。
章江さんは相変わらず暗い色を好んでいるのか、グレーのスーツを着ていた。
その真逆なのが毬衣さんで、胸元が大きく開いた赤のワンピース姿だった。
二人に共通しているのは目の下に隈を作っているということだった。
私が知久と現れると、二人はわずかにひるんだ。
「穂風。ごめんなさいね。迷惑をかけて」
「平気。望未ちゃんが嫌な思いをすると困るから、出勤はランチタイム直前でいいよって連絡をしておいたよ」
「ありがとう、助かるわ」
純粋な望未ちゃんがこの二人を見たらどう思うか。
章江さんは憎悪のこもった目で私を見ていた。
きっと娘の恋の相手を奪った悪い女。
そんなふうに思われているのだろう。
「知久さんは呼んでませんよ」
冷ややかな章江さんの目に怯むことなく、知久は微笑んだ。
「小百里と俺が婚約したと陣川から聞いてませんか。ついさっきまで一緒にいたので、店まで送ったんですよ」
私は頬をひきつらせ、穂風はカウンター横の柱に頭をゴンッとぶつけていた。
「い、一緒に!?」
毬衣さんが青ざめた顔で私を見てにらみつけた。
「将来について語りあう必要があったので。ね、小百里?」
さりげなく、すでに呼び捨てにしているけど、毬衣さんは気づいている。
もちろん、穂風も。
穂風は頬を引きつらせていた。
「そうです。知久さんの仕事のスケジュールもありますから、お互いの仕事を尊重してこの先を決めるつもりです」
一緒にいたことをわざわざアピールする必要はないでしょ!?と、知久をにらみつけた。
余計なこと言わないで欲しい。
知久に目で合図を送ったけれど、向こうは『もっとアピールしようよ』と目を輝かせて私を見てくる。
するわけないでしょっ!?
「……私は結婚後もカフェは続けるつもりなので話をしておきたくて」
知久がなにか余計なことを言う前に、先回りをして、それらしいことを言った。