私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
気になったから連絡したという雰囲気を出したけれど、そう簡単にはいかないようだった。
「もう話は結婚後まで進んでいるの? 私の気持ちを知っていてよくそんなことが言えるわね!」
「知久さんがいる前でする話でもないけれど、小百里さんからこの婚約を辞退していただきたいと思ってここにきたのよ」
唇を噛みしめ、手を震わせている毬衣さんを章江さんがなだめながら私に言った。
「それは無理じゃないかな。陣川の家が二度も渋木に婚約を断られたとなるとさすがの父も許さない」
「無理を承知で言っているんですよ。知久さんに情があるのなら、毬衣を可哀想だと思ってはくれないの?」
「そうよ! だいたい小百里が新しい婚約者だなんて聞いてないわ! 他の女ならいいけど、どうして小百里なの!」
「なにを言っているかわからないな」
日が陰り、店の中が薄暗くなった。
知久が本気で怒るところを見たことがなかったけれど、今、知久は怒っている。
そんな気がした。
「章江さんががよく言っていたじゃないですか。『渋木の娘』ってね。陣川の家に渋木の娘が嫁ぐだけの話では?」
「それは……」
「毬衣さんも家同士の決定は絶対って言ってなかったっけ? 笙司さんと二人で」
コツと知久が前に一歩歩み出る。
「もう話は結婚後まで進んでいるの? 私の気持ちを知っていてよくそんなことが言えるわね!」
「知久さんがいる前でする話でもないけれど、小百里さんからこの婚約を辞退していただきたいと思ってここにきたのよ」
唇を噛みしめ、手を震わせている毬衣さんを章江さんがなだめながら私に言った。
「それは無理じゃないかな。陣川の家が二度も渋木に婚約を断られたとなるとさすがの父も許さない」
「無理を承知で言っているんですよ。知久さんに情があるのなら、毬衣を可哀想だと思ってはくれないの?」
「そうよ! だいたい小百里が新しい婚約者だなんて聞いてないわ! 他の女ならいいけど、どうして小百里なの!」
「なにを言っているかわからないな」
日が陰り、店の中が薄暗くなった。
知久が本気で怒るところを見たことがなかったけれど、今、知久は怒っている。
そんな気がした。
「章江さんががよく言っていたじゃないですか。『渋木の娘』ってね。陣川の家に渋木の娘が嫁ぐだけの話では?」
「それは……」
「毬衣さんも家同士の決定は絶対って言ってなかったっけ? 笙司さんと二人で」
コツと知久が前に一歩歩み出る。