私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
その目に熱はない。
毬衣さんは青ざめて震えていた。
「家って……。知久さんが私との婚約を引き受けたのはもしかして小百里の代わりに復讐するつもりだったの? 高窪の家に……」
「夫が社長を解任されたのは知久さんの仕業!?」
「さあ?」
嘘か本当か―――その証拠はどこにもない。
けれど、いつもとは違う知久の様子に二人はだいたいのことを察したようだった。
知久の本性を知ったのは今なのかもしれない。
驚き、言葉はなく、信じられないものでも見るような目で知久を見ている。
人当たりのいい知久は表向きだけ。
知久がさらに二人を追い詰めようと前に出た瞬間、腕をつかんだ。
「章江おば様。渋木と陣川の仲を壊すような真似をなさるなんて、おば様らしくありませんわ」
にっこり微笑むと章江さんはグッと言葉に詰まった。
「おば様は渋木の家のことを昔からよく考えてくださっていますもの。私と知久さんの婚約がいかに重要かおわかりのはず」
章江さんの頭の中は簡単。
自分が生まれ育った渋木への未練を捨てきれず、高窪よりも心の中では優先している。
高窪物産の社長でなくなった今、その気持ちはさらに強くなり増しているはずだった。
「……毬衣、帰るわよ」
毬衣さんは青ざめて震えていた。
「家って……。知久さんが私との婚約を引き受けたのはもしかして小百里の代わりに復讐するつもりだったの? 高窪の家に……」
「夫が社長を解任されたのは知久さんの仕業!?」
「さあ?」
嘘か本当か―――その証拠はどこにもない。
けれど、いつもとは違う知久の様子に二人はだいたいのことを察したようだった。
知久の本性を知ったのは今なのかもしれない。
驚き、言葉はなく、信じられないものでも見るような目で知久を見ている。
人当たりのいい知久は表向きだけ。
知久がさらに二人を追い詰めようと前に出た瞬間、腕をつかんだ。
「章江おば様。渋木と陣川の仲を壊すような真似をなさるなんて、おば様らしくありませんわ」
にっこり微笑むと章江さんはグッと言葉に詰まった。
「おば様は渋木の家のことを昔からよく考えてくださっていますもの。私と知久さんの婚約がいかに重要かおわかりのはず」
章江さんの頭の中は簡単。
自分が生まれ育った渋木への未練を捨てきれず、高窪よりも心の中では優先している。
高窪物産の社長でなくなった今、その気持ちはさらに強くなり増しているはずだった。
「……毬衣、帰るわよ」