私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「そんなっ! 小百里に知久さんを盗られたままでいいの?!」
「盗った盗られたという小さな話ではないのよ。渋木グループと陣川製薬の関係が絡んでいるの。あなたには他の婚約者を探してあげるわ」
「い、嫌よ!」
「黙りなさい!」
章江さんの鋭い声に毬衣さんの体がびくっと震えた。
「高窪はもうあてにならないわ。渋木の実家だけが頼りなのよ! 夫の働く場所を頼まなくては……。毬衣、あなたの就職先も渋木の家に探してもらいますからね!」
「私が働くの!?」
お嬢様育ちの毬衣さんはバイトすらしたことがなかったし、章江さんも今までお金の心配なんてしたことがなかった。
やっと現実が見えてきたのか、焦りながら章江さんは毬衣さんの腕をつかんだ。
店のドアを穂風が開けて、どうぞと案内すると章江さんは逃げるように出て行った。
穂風はやれやれとドアを閉めて言った。
「さすが小百里はあのモンスター母娘の扱いに慣れてるね。私なんて、いまだにあの勢いに負けちゃうよ。それで、知久君と婚約したんだ? おめでとう」
「ありがとう。穂風」
「……小百里。知久君がいじけているんだけど」
カウンターチェアに座り、面白くなさそうに肘をついて私と穂風を見ていた。
「とどめを刺そうと思ったのに邪魔しなくても」
「盗った盗られたという小さな話ではないのよ。渋木グループと陣川製薬の関係が絡んでいるの。あなたには他の婚約者を探してあげるわ」
「い、嫌よ!」
「黙りなさい!」
章江さんの鋭い声に毬衣さんの体がびくっと震えた。
「高窪はもうあてにならないわ。渋木の実家だけが頼りなのよ! 夫の働く場所を頼まなくては……。毬衣、あなたの就職先も渋木の家に探してもらいますからね!」
「私が働くの!?」
お嬢様育ちの毬衣さんはバイトすらしたことがなかったし、章江さんも今までお金の心配なんてしたことがなかった。
やっと現実が見えてきたのか、焦りながら章江さんは毬衣さんの腕をつかんだ。
店のドアを穂風が開けて、どうぞと案内すると章江さんは逃げるように出て行った。
穂風はやれやれとドアを閉めて言った。
「さすが小百里はあのモンスター母娘の扱いに慣れてるね。私なんて、いまだにあの勢いに負けちゃうよ。それで、知久君と婚約したんだ? おめでとう」
「ありがとう。穂風」
「……小百里。知久君がいじけているんだけど」
カウンターチェアに座り、面白くなさそうに肘をついて私と穂風を見ていた。
「とどめを刺そうと思ったのに邪魔しなくても」