私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
目に見えて、落ち込む知久のことが可哀想になったのか、穂風は笑いながら試作品のチーズケーキを置いていった。
ビスコッティとチーズケーキが並ぶ。

「子供扱いかな……」

「文句を言うなら、私が食べるわよ」

穂風の親切を素直に受け取りなさいよ。
ディナータイムのテラス席に置いてあるキャンドルに火を灯し、私が戻って来ると知久は言った。

「でも、まあ、一緒に暮らしてるし? もう結婚してるようなものだよね?」

私の胸元に光るティアドロップのネックレスを眺め、微笑んだ。
服の下に隠れていたネックレスも今はこうして、身に着けることができる。

「そうね」

私達は焦る必要はない。
これから先、嫌というほど一緒にいて、こうして他愛ない話をしていられるのだから。

「お客様が来たみたいだよ」

穂風がドアを指さした。
店のドアが開く。

「知久、来てたのか」

「夕飯を作るのがめんどうで食べに来ました」

唯冬(ゆいと)千愛(ちさ)ちゃん、そしてその後ろからは仕事を終わらせたばかりの逢生(あお)君が入ってくる。

「あれー? 逢生。今日は一人?」

「女子会があるから、俺だけで夕飯食べてって言われた……」

「一人だと逢生はなにも食べないかもしれないから、一緒に連れてきた」

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