私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
けれど、それを清加さんの前で唯冬は言えない。
母親を傷つけたくなくて、唯冬が言えないことを毬衣さんはわかっていて、それを言うのだ。

「あら、唯冬さん。だめよ。 悪いのは小百里のほうじゃない? 渋木の娘が、貧乏人の学校に通うなんて冗談じゃないわ。小百里って、馬鹿なの? それくらいわからないの?」

毬衣さんは中学生だけど、お化粧をし、ブランドのバッグを持ち、着ている制服はデザイナーがデザインした制服を着ている。
ワンピースとジャケットのお洒落な制服で、高価な制服と評判の制服だった。
お金持ちが通う私立中学のものであることは知っている。

「ああ、嫌だわ。こんな子が渋木の家に入るなんて。でもね、清加さん。安心して。あなたはなにも心配しなくていいのよ。私がよく弟に言い聞かせますからね。まだ病院に通っていらっしゃるのでしょ?」

病院―――?
どこか体に悪いところでもあるのだろうかと、清加さんを見る。
表情は暗く、伯母や毬衣さんから目を逸らして俯いていた。

「ええ……」

「清加おば様、かわいそう。隠し子がいたなんて知らなかったものね。私だって病気になっちゃうわ。しかも、その隠し子を引き取って、一緒に暮らすなんて最悪よね」

「私が隠し子……」

< 37 / 172 >

この作品をシェア

pagetop