私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
笙司さんはわずかに目を鋭くさせて赤ワインを一口飲んだ。
自分の存在を無視されているようで面白くなかったのか、少し不機嫌そうだった。
知久と合う性格でないことはわかっていた。
「昔からの付き合いですもの。唯冬と同じ手のかかる弟よ」
「弟か。そういえば、唯冬君は知久君の妹と婚約しているんだったかな?」
「親が決めただけの婚約だけどね。だから、結婚相手を決めるのは唯冬本人だと俺は思ってますよ?」
太陽みたいに明るくて、春の風のように軽かった知久の声がわずかに鋭くなった。
「それは唯冬君が婚約を取りやめるつもりでいると?」
「そうなったとしても俺は反対しない。ご覧の通り、俺の性格からして親が決めた相手より好きな相手と結婚したほうがいいって思うタイプだし?」
私に向かって知久は同意を求めるようにウインクしてきた。
さすがの私も苦笑するしかなかった。
同意してあげたくても婚約者を前にして、その言葉に同意する図太さはさすがに私にはないわよ……
空気を読みなさいよ、空気を。
目で、そう訴えておいた。
「女の胸の中に幸せを見い出せない者はこの世の愛を味わうことはできない―――か」
歌劇リゴレットの女心の歌を笙司さんは引用し、ワイングラスを傾け、くすりと笑う。
自分の存在を無視されているようで面白くなかったのか、少し不機嫌そうだった。
知久と合う性格でないことはわかっていた。
「昔からの付き合いですもの。唯冬と同じ手のかかる弟よ」
「弟か。そういえば、唯冬君は知久君の妹と婚約しているんだったかな?」
「親が決めただけの婚約だけどね。だから、結婚相手を決めるのは唯冬本人だと俺は思ってますよ?」
太陽みたいに明るくて、春の風のように軽かった知久の声がわずかに鋭くなった。
「それは唯冬君が婚約を取りやめるつもりでいると?」
「そうなったとしても俺は反対しない。ご覧の通り、俺の性格からして親が決めた相手より好きな相手と結婚したほうがいいって思うタイプだし?」
私に向かって知久は同意を求めるようにウインクしてきた。
さすがの私も苦笑するしかなかった。
同意してあげたくても婚約者を前にして、その言葉に同意する図太さはさすがに私にはないわよ……
空気を読みなさいよ、空気を。
目で、そう訴えておいた。
「女の胸の中に幸せを見い出せない者はこの世の愛を味わうことはできない―――か」
歌劇リゴレットの女心の歌を笙司さんは引用し、ワイングラスを傾け、くすりと笑う。