私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
冷めた声に私と穂風はハッとして店の入り口を見ると毬衣さんが立っていた。
切り揃えられた髪はまた短くなったような気がした。
穂風は今日のメニューを書いていた手を止め、椅子から立ち上がった。
「毬衣。まだ小百里に嫌がらせしてるの? いい加減大人になりなよ」
同じ菱水音大附属高校だった私達はお互いに顔見知りだけど、仲はよくない。
毬衣さんが私に嫌がらせをしているのを他の生徒はよく思わず、孤立していたこともあったのに毬衣さんは私への嫌がらせをやめることはなかった。
私と仲良くしている穂風に対してもそうで、先輩から後輩、他校にまで及ぶ穂風ファンの女子を敵に回していたことに気づいていない。
「音大の進学をやめてコック? 小百里と一緒に店なんかやって失敗しなきゃいいけど」
毬衣さんは穂風のことを馬鹿にするように言った。
「毬衣さん。ご忠告をありがとう。そうならないように頑張っているわ」
私が笑顔を浮かべながら言うと、毬衣さんが怯んだのがわかった。
「そうそう。心配ご無用だよ。こっちは好きでやってることなんだし」
元々、穂風は料理好きだった。
高校時代は指を怪我するからと言われ、家ではなにも作らせてもらえずにいたけれど、大学に進学するタイミングで家を出た。
切り揃えられた髪はまた短くなったような気がした。
穂風は今日のメニューを書いていた手を止め、椅子から立ち上がった。
「毬衣。まだ小百里に嫌がらせしてるの? いい加減大人になりなよ」
同じ菱水音大附属高校だった私達はお互いに顔見知りだけど、仲はよくない。
毬衣さんが私に嫌がらせをしているのを他の生徒はよく思わず、孤立していたこともあったのに毬衣さんは私への嫌がらせをやめることはなかった。
私と仲良くしている穂風に対してもそうで、先輩から後輩、他校にまで及ぶ穂風ファンの女子を敵に回していたことに気づいていない。
「音大の進学をやめてコック? 小百里と一緒に店なんかやって失敗しなきゃいいけど」
毬衣さんは穂風のことを馬鹿にするように言った。
「毬衣さん。ご忠告をありがとう。そうならないように頑張っているわ」
私が笑顔を浮かべながら言うと、毬衣さんが怯んだのがわかった。
「そうそう。心配ご無用だよ。こっちは好きでやってることなんだし」
元々、穂風は料理好きだった。
高校時代は指を怪我するからと言われ、家ではなにも作らせてもらえずにいたけれど、大学に進学するタイミングで家を出た。