私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
私は微笑んで、笙司(そうじ)さんと女性が写る写真を手にした。
その写真を見ても、心が波立つことはなく、()いだ海のように穏やかなままだった。

「心配していただいてありがとう。もうすぐディナータイムだけど、お食事は?」

「……しないわよ! そんな澄ました顔をよくできるわね! やっぱり小百里(さゆり)は笙司さんのことを好きじゃないのね!」

「それは仕方ないわ。婚約を決めたのは私ではないもの。情熱的にはなれないのは当たり前よね」

「私に対する嫌味?」

「いいえ。これは私の気持ちの話でしょう? 毬衣さんは関係ないわ」

毬衣(まりえ)さんはきつい目をして、私をにらみつけていた。
知久(ともひさ)との婚約をどうしても、と言って決めた毬衣さん。
私の言葉に苛立ったのは、知久とのことがあるからだと、なんとなく察した。
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