私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
2 私達には婚約者がいる(2)
不機嫌な毬衣さんを気にすることなく、知久は笑って言った。
「ご心配なく。俺が女性関係で困ったことは一度もないので」
「それは女性のご機嫌をとるのがうまいということだろうが、婚約者のご機嫌はまた違うものだ」
笙司さんは毬衣さんのほうを気にかけながら言った。
それだけ、こちらに敵意を向けてきているからで、特に私のことを嫌っている。
毬衣さんの髪は私と違って短い。
耳の下で切り揃えているのには理由があって、私の髪がロングで同じ髪型にしたくないからだと本人がわざわざ言ってきた。
猫のように細い目をしたきつめの美人で機嫌を損ねると面倒なタイプ。
知久はため息をついた。
「こっちは仕事で遊んでるわけじゃないんだけどなー」
その態度で?
疑わしいにもほどがある。
そもそも、まだ知久は仕事中。
今は休憩時間なのに気軽にテーブルにやってきて、知り合いとおしゃべりなんて、自由すぎる。
ファンなら嬉しいだろうけど、笙司さんは物凄く迷惑そうな顔をしていた。
それでも知久が陣川家の息子だから、邪険に扱うことなんてできなかった。
「仕事とはいえ、さすがに婚約者の前で他の女性に愛想を振り撒くのはまずいだろう」
「俺は別に自分から振り撒いていませんよ? 向こうから手を振ってくるから、応じているだけで。ほらね」
ひらひらと知久は女性客に手を振り返す。
振り撒いてるのは愛想じゃなくてフェロモンだと思うわ。
「ご心配なく。俺が女性関係で困ったことは一度もないので」
「それは女性のご機嫌をとるのがうまいということだろうが、婚約者のご機嫌はまた違うものだ」
笙司さんは毬衣さんのほうを気にかけながら言った。
それだけ、こちらに敵意を向けてきているからで、特に私のことを嫌っている。
毬衣さんの髪は私と違って短い。
耳の下で切り揃えているのには理由があって、私の髪がロングで同じ髪型にしたくないからだと本人がわざわざ言ってきた。
猫のように細い目をしたきつめの美人で機嫌を損ねると面倒なタイプ。
知久はため息をついた。
「こっちは仕事で遊んでるわけじゃないんだけどなー」
その態度で?
疑わしいにもほどがある。
そもそも、まだ知久は仕事中。
今は休憩時間なのに気軽にテーブルにやってきて、知り合いとおしゃべりなんて、自由すぎる。
ファンなら嬉しいだろうけど、笙司さんは物凄く迷惑そうな顔をしていた。
それでも知久が陣川家の息子だから、邪険に扱うことなんてできなかった。
「仕事とはいえ、さすがに婚約者の前で他の女性に愛想を振り撒くのはまずいだろう」
「俺は別に自分から振り撒いていませんよ? 向こうから手を振ってくるから、応じているだけで。ほらね」
ひらひらと知久は女性客に手を振り返す。
振り撒いてるのは愛想じゃなくてフェロモンだと思うわ。