私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
第一楽章は速さの変化に戸惑わず流れるように弾く。
音の緩急はまるで嵐の始まり。
曲は第二楽章に入る。
知久が私の演奏を目を閉じて聴く。
第二楽章は、さっきと違う穏やかな曲調。
けれど、私にはこの楽章の中に小さな嵐が隠れ潜んでいるように思えた。
これから、始まる嵐の予感が、音の中に混じっている。
続く第三楽章に入ると、曲の嵐は最大となり、激しく強い音に変わる。
初見で弾いた私の演奏を聴いた先生からは、まるで閉じ込めてある感情をぶつけているようだと言われた。
それは正しいかもしれない。
けれど、私は日々の平穏を願っている。
できることなら、これ以上の苦しみがないようにと。
私だけじゃなく、清加さんにも家族になってくれた唯冬達にも。
いつ止むかわからぬ嵐の終わりが近づく気配の音。
ラストは少し明るめに弾く。
そして軽やかに終わらせる―――嵐が止むと知久は口を開いた。
「第三楽章が好きだな」
「そう?」
「心の中の嵐を吐き出しているみたいで」
「……そんなことないわ」
先生と同じことを知久は言った。
知久に嘘はつけない。
私の心を簡単に見透かす。
初めて会った時から、その存在は特別で他とは違っていた。
音の緩急はまるで嵐の始まり。
曲は第二楽章に入る。
知久が私の演奏を目を閉じて聴く。
第二楽章は、さっきと違う穏やかな曲調。
けれど、私にはこの楽章の中に小さな嵐が隠れ潜んでいるように思えた。
これから、始まる嵐の予感が、音の中に混じっている。
続く第三楽章に入ると、曲の嵐は最大となり、激しく強い音に変わる。
初見で弾いた私の演奏を聴いた先生からは、まるで閉じ込めてある感情をぶつけているようだと言われた。
それは正しいかもしれない。
けれど、私は日々の平穏を願っている。
できることなら、これ以上の苦しみがないようにと。
私だけじゃなく、清加さんにも家族になってくれた唯冬達にも。
いつ止むかわからぬ嵐の終わりが近づく気配の音。
ラストは少し明るめに弾く。
そして軽やかに終わらせる―――嵐が止むと知久は口を開いた。
「第三楽章が好きだな」
「そう?」
「心の中の嵐を吐き出しているみたいで」
「……そんなことないわ」
先生と同じことを知久は言った。
知久に嘘はつけない。
私の心を簡単に見透かす。
初めて会った時から、その存在は特別で他とは違っていた。