私達には婚約者がいる【菱水シリーズ④】
「小百里と!? 私が知久さんと一緒に弾くわ! 知久さんの婚約者は私なんだから、他の女と弾くなんて嫌っ!」
「それは毬衣さんが実技試験を通ったら考えるよ」
毬衣さんは顔を赤らめ、母親の章江さんが走って来た。
「ごめんなさいね。この子ったら、まだ子供で」
俺の機嫌を損ねるとでも思ったのか、毬衣さんの手を引いて、俺から遠ざけた。
サンルームの片隅で章江さんが毬衣さんを叱っているのが見えた。
大方、試験を通らなかったからといって小百里に八つ当たりしていたのだろう。
「弾くよね? 小百里」
俺は彼女を誘う。
さあ、こちら側へどうぞと。
差し伸べた俺の手を彼女は手に取る。
「小百里さんが伴奏をなさるのね。楽しみね」
「二人の演奏はどんな演奏かしら」
小百里のことを良く思っていなかった親戚達も、毬衣さんが俺と無理やり婚約してから、ここぞとばかりに小百里の味方をしてくる。
だいたい毬衣さんは練習もろくにしていない。
俺と弾けば、ただ恥をかくだけだ。
それをわかっているからこそ、母親である章江さんは口を出せなった。
小百里は俺の手をとり、ピアノのそばへと歩く。
その指は緊張のためか冷たく、握りしめるとわずかに小百里が驚いて身を強張らせた。
「それは毬衣さんが実技試験を通ったら考えるよ」
毬衣さんは顔を赤らめ、母親の章江さんが走って来た。
「ごめんなさいね。この子ったら、まだ子供で」
俺の機嫌を損ねるとでも思ったのか、毬衣さんの手を引いて、俺から遠ざけた。
サンルームの片隅で章江さんが毬衣さんを叱っているのが見えた。
大方、試験を通らなかったからといって小百里に八つ当たりしていたのだろう。
「弾くよね? 小百里」
俺は彼女を誘う。
さあ、こちら側へどうぞと。
差し伸べた俺の手を彼女は手に取る。
「小百里さんが伴奏をなさるのね。楽しみね」
「二人の演奏はどんな演奏かしら」
小百里のことを良く思っていなかった親戚達も、毬衣さんが俺と無理やり婚約してから、ここぞとばかりに小百里の味方をしてくる。
だいたい毬衣さんは練習もろくにしていない。
俺と弾けば、ただ恥をかくだけだ。
それをわかっているからこそ、母親である章江さんは口を出せなった。
小百里は俺の手をとり、ピアノのそばへと歩く。
その指は緊張のためか冷たく、握りしめるとわずかに小百里が驚いて身を強張らせた。