第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
アシュレイ殿下が、静かに自分のテントへと戻っていく背中を見送った。

私は自分の簡易ベッドに腰を下ろし、ぽつりとため息をつく。

「怖いか?」

兄の低い声が聞こえた。すぐ隣で、寝る準備をしていたらしい。

「……うん。でも、足手まといにはならない。」

それだけは、固く誓っていた。

兄はふっと笑って、私に言った。

「分かってるよ。リリアーナは、もういっぱしの騎士だ。」

そう言って、寝具にくるまると、ほどなく静かな寝息が聞こえてきた。

でも私は――眠れなかった。

何度目かのため息が漏れる。

(私……明日、死ぬかもしれない。)

そんな現実が、じわじわと胸に迫ってくる。

こわい。だけど、それ以上に――

(アシュレイ殿下の顔を、今……見たい。)

このまま眠って、もし明日が来なかったら。

せめて、もう一度だけ……あの瞳を、この目に焼き付けておきたい。
< 24 / 103 >

この作品をシェア

pagetop