第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
その場にいた誰もが一瞬、動きを止めた。

(……え? いまの、夫婦喧嘩?)

私は思わず兄の顔を見たが、彼は何も言わず前を向いたままだった。

ドアの向こうで、言い合いは続いていた。王子の激情と、妃の拒絶――

胸の奥が、なぜかざらつく。

初めて聞いたその声は、冷たい怒りの中に、どこか…寂しさを含んでいた。

そしてしばらくすると、噂の“アシュレイ殿下”が私たちの方へと歩いてきた。

「アシュレイ殿下。騎士団長に任命されました、ダリウス・ファルクレストです。」

兄が姿勢を正し、敬礼を送る。

彼は、背筋を伸ばし毅然と立つ兄の前に立ち止まった。その瞳は――深く澄んだ、緑。

(……綺麗。)

思わず見惚れてしまう。まるで宝石のような瞳だった。

「第3皇子、アシュレイだ。今度、将軍を任された。」

落ち着いた声。低く、冷たい印象を受けたけれど、不思議と耳に残る響きだった。

「一緒にこの国を守りましょう。」
< 3 / 103 >

この作品をシェア

pagetop