第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している

第5部 夜の呼び出し

ある夜のことだった。

私が滞在している使用人の部屋――騎士団の男たちと同室では危険だと、アシュレイが用意してくれた小部屋。

そこに、一人の使用人が静かにやってきた。

「……リリアーナ様。アシュレイ殿下がお召しです」

「……お召し?」

私は首をかしげた。

この時間に? 何のために?

戸惑いを隠せずにいると、使用人は無表情のまま続けた。

「夜伽役として――です。」

その言葉が、まるで刃のように胸に突き刺さる。

夜伽役。

それは、王族の“妃”や“愛妾”が果たす役割。

(……そんなの、私じゃない)

あの夜、交わした言葉。確かに愛し合った時間。

それは……ただの慰みだったの?

心がざわつく。

「……断ることは、できますか?」

私の問いに、使用人は一瞬だけまばたきをし――

静かに、部屋の中へと足を踏み入れた。

ドアが音もなく閉じられる。
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