第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している
「失礼ですが……アシュレイ殿下の夜伽を務めたことは、以前にありますか?」

その問いに、息が詰まる。

(言えない……まさか“あります”だなんて。)

口をつぐんだ私を見て、使用人は眉ひとつ動かさず続けた。

「不思議なんです。第3皇子ともあろうお方が、貴族の令嬢ではなく、一介の庶民の娘を“夜伽役”に指名するのが。」

その言葉に、胸がかすかに震えた。

――アシュレイは、私を欲してくれているの?

ただの慰みの相手なんかじゃなくて、あの夜の“続き”を、彼の心が求めているのだとしたら――

私は小さく息を吐き、胸に手を当てた。

愛と疑いの狭間で揺れる想い。

それでも――アシュレイに、もう一度会いたいと思ってしまう自分がいた。

「リリアーナ。……迷うということは、あなたもアシュレイ殿下を求めているのですか?」

使用人の穏やかな声に、私は唇を噛んだ。

――答えてはいけない。
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