野いちご源氏物語 三〇 藤袴(ふじばかま)
大宮(おおみや)様の喪(も)が明けて、玉葛(たまかずら)の姫君(ひめぎみ)は喪服(もふく)をお脱ぎになった。
尚侍(ないしのかみ)として内裏(だいり)にお上がりになるのは十月と決まった。
帝(みかど)が待ち遠しくお思いになる一方で、求婚者たちは悔(くや)しくてお焦(あせ)りになる。
内裏に上がられる前に姫君を口説き落とそうと、知り合いの女房(にょうぼう)にお手紙を預けようとなさる。
でも女房たちはそんなものを受けとらない。
もう尚侍(ないしのかみ)にお決まりになった姫君だもの。

若君(わかぎみ)は宮(みや)仕(づか)えのご準備を手伝われる。
<半端(はんぱ)に恋心をお伝えしてしまったが、どうお思いだろう>
苦しいお心をごまかすように、丁寧に御用(ごよう)を伺(うかが)って働いておられる。
もう恋心を伝えようとは思わず落ち着いたご様子でいらっしゃる。

実の弟君(おとうとぎみ)たちは源氏(げんじ)の君(きみ)に遠慮してお手伝いには上がられない。
宮仕えなさってから後見(こうけん)させていただこうと、その日を待ちかねていらっしゃる。
あれほど姫君に恋(こ)い焦(こ)がれていた内大臣(ないだいじん)様のご長男が、そんなことなかったかのように澄(す)ましていらっしゃるのを女房たちはおかしがっている。
そのご長男が、内大臣様から姫君へのご伝言をお預かりしてお越しになった。
本当の親子関係をまだ公表していないから、内大臣様と姫君はこっそりやりとりをなさっているの。
姫君の弟君でいらっしゃるご長男には、お部屋近くの縁側(えんがわ)にお席がご用意されたわ。
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