この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
「……なんで、そんな簡単に言えるんですか。」

私は少し拗ねたように言った。

でも、どこかでその余裕が羨ましくて仕方なかった。

「だって俺、この仕事で成功したいと思ってるから。」

奏のその一言は、冗談でも軽口でもなかった。

その目はまっすぐで、どこまでも本気だった。

「これから何億っていう年商をあげるのに、千万円の借金なんて、かわいいもんじゃない?」

私は思わず、彼の横顔を見つめた。

――羨ましい、と思った。

自信があって、夢があって、未来を見据えている人。

そんな人、最近ずっと見ていなかった。

私の周りには、誰もいなかった。

「そうかも。」

ぽつりと答えて、私はナイフでハンバーグを切った。

口に入れると、じゅわっと肉汁が広がって、ほんの少しだけ、心がほぐれた。
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