この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
「……はい。」

私は、そっと頷いた。

三日だけ考える。

それは、心を決めるための猶予であり――

逃げ出すための言い訳にもできる、最後の猶予だった。

翌日。

ぼんやりと洗濯物を畳んでいたとき、インターホンが鳴った。

こんな時間に誰だろう――そう思いながらモニターを覗くと、そこには朝比奈 奏の姿があった。

「……え?」

思わず声が出る。

慌てて玄関を開けると、彼は立っていた。スーツ姿のまま、ほんの少しだけネクタイを緩めて。

「どうして……?」

「君の顔を見に来た。」

玄関のドアを開けたまま、ぽかんとしてしまった私に、彼はさらりとそう言った。

さっきまでの室内の静けさが、嘘みたいに変わる。

「えっ……」

昨日、あんな大きな話をしたばかりなのに――

まだ、答えも出していないのに。
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