この結婚はビジネスのはずでしたが、御曹司が本気で愛してきます
「入ってもいい?」

「……あ、どうぞ。」

思わず通してしまった。

彼は部屋をぐるっと見回して、玄関先で靴を脱ぎながら、自然な口調で言った。

「今日は何してた?」

「え?」

「仕事だった?」

「あ……はい。仕事でした。」

「なんの仕事してるの?」

少しだけ迷ったけど、隠す理由もない。

「……看護師です。」

そう答えた瞬間、彼はふっと笑った。

「癒されるのは、そのせいか。」

その言葉に、私は少し戸惑った。

「癒すようなこと……私、してませんよ?」

「いや、してる。昨日から、なんとなくそう思ってた。」

そんな風に言われたの、初めてだった。

彼の笑顔は、昨日の社長としての顔とは違っていて、少し子どもみたいで――

ちょっとだけ、温かかった。

胸の奥が、じんわりと熱を帯びる。

私はまだ迷ってる。
契約結婚なんて、簡単に決められることじゃない。

でもこの人と話していると、不思議と怖さが少しだけ薄れていく。
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