全部、俺のものになるまで
そして──タクシーを降りて、私が連れて来られたのは、相馬課長の自宅だった。

「水だ。」

差し出されたコップを両手で受け取り、一口飲む。

ひんやりとした水が喉を通ると、不思議と酔いが少し引いた。

「……ありがとうございます。」

そう口にした瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。

緊張よりも、安心のほうが勝っていた。

「泊まっていけ。」

不意にそう言われて、顔を上げると──

課長の顔が近くにあった。

その距離に、思わず息が止まる。

「……うん。」

うなずいた自分の声が、少し震えていた。

でも、もっと彼の側にいたいと思ってしまったのは事実だった。

「シャワー、浴びるか?」

課長がクローゼットを開け、バスタオルを差し出してくれる。

「え、あ……ありがとうございます。……お風呂、いただきます。」

「……ああ。」

短い返事。でも、どこか優しくて。

その声に背中を押されて、私は浴室へと向かった。
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