全部、俺のものになるまで
給湯室に行くと、掃除を担当している年配の女性がひとり、静かにモップを動かしていた。

「お疲れさまです。」と声をかけると、彼女は顔を上げて、私の名札を見つめた。

「……水原さんって言うのね。もしかして、お名前、瑠奈って言う?」

「はい、そうですけど……」

答えると、彼女はふふっと優しく笑った。

「あなたが、相馬課長の言ってた“瑠奈ちゃん”なのね。」

「……えっ?」

思わず固まった。

課長が……私のことを、話してた?

「彼ね、ずーっとあなたのこと想ってたのよ。会話は多くないけど、いつも名前が優しかったもの。」

一瞬、呼吸が止まった気がした。

「この前も、“瑠奈ちゃん、無事だった”ってほっとしてたのよ。……泊まったって聞いて、ああ、やっと報われたのねって思ったの」

胸の奥が、ぎゅっと熱くなる。

「……課長が、私の話を……?」

「うん。あの人、不器用だけど、あったかいのよ。言葉に出せないだけでね。」
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