全部、俺のものになるまで
私はそのまま、課長の胸に身を委ねた。

「……私も。あなたが好き。」

その瞬間、ふわりと顎を持ち上げられ、優しく唇を塞がれる。

温かくて、柔らかくて──どこまでも、愛しかった。

キスが離れた後、彼はそっと囁いた。

「知ってたよ。君を初めて抱いた時……ちゃんと、伝わってきたから。」

その言葉に、ぽろりと涙がこぼれる。

「でも……会社で“女遊びしてる”って噂があって……私……」

苦しくて、言葉を飲み込むと、彼はあっけにとられたように眉を下げた。

「はあ? 真面目に仕事してただけなのに?」

その返しに、私は思わず笑ってしまった。

「……ですよね。課長、いつも真面目で、かっこつけで、不器用で。」

「あと、君に甘い。」

にやりと笑ったその顔が、愛しくてたまらなかった。

もう、何も疑わない。

“ふり”なんていらない。

今のこの時間だけが、すべて。
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